第一回「これは面白い! お笑いやん!」

 
「ヨクキコエマセン」
すべての事に関してYESのはずのロボットが
僕が話しかけた時、まさか否定の言葉を
返してきたのにはびっくりした。

僕は2002年に横浜のパシフィコで
開催されたロボット博覧会を見に行った。

僕はそれまで現実のロボットを
生で見た事がなかったせいか
色々なブースの前に並ぶ開発途中のロボットや
展示ショーで動くロボットを見た時
僕の頭の中が久々に、ざわざわした。

各ブースには「夢を実現」などと書かれてあったり
「未来を作る」なんて文字。

心は踊ったがその文字とはほど遠い
理系軍団のメガネ度の高い男性の方々に
スーツを着込んだビジネスマンの
どんよりとしたムードに会場酔いをしそうになった。

「このロボットはどうなるんですか?」

とブースの理系の男性の方に聞くと目をあわさずに
説明をしてくれる丁寧な開発者の方々。
僕の日常使ってる言葉とはまったく異なる専門用語
で話されるので, まるで外国語を話してるようである。

「これって手が飛ぶんですか?」
何ひとつロボット業界の現実を知らない僕。
そのとんちんかんな僕の質問に唖然とする開発者。

展示ショーでは豪華なASIMOの今世紀最大のショーが始まった。
HONDAの名前の入ったコスチュームに身を包んだおねえさんの
「さて!みなさま!こんにちは!」とあの独特の心のないMC口調。
ASIMOの登場です!」と大層な音楽が流れると
来てるお客さんも持ってるデジカメをパシャリパシャリ。

ゆったりとASIMOが歩いてくるが、
袖にはHONDAのウインドブレーカーを着た
おじさまがひやりひやりと見ていてASIMOが止まる度に出てきては、
ケアをする。まるで晩年のミヤコ蝶々さんのような扱いとドタバタ感。

MCののお姉さんも「そのあたりをツッコめよ!笑いになるで!」
と思うのだが、誰もツッコム事もなくぴりぴりムードの微妙な空気。

なんだろう?
この空間は。。。

と、その横に僕の今までのイメージのロボットとは
ほど遠いロボコンにも似たかわいいロボットがいた。
パーソナルロボットと書かれていてどうやら喋るらしい。

その名もパペロ。

N○Cとロゴの入った服を着た笑顔満点のおねえさんが
「どうぞ!話しかけてください」
僕は「こんにちは!」とパペロに言った。

「ヨクキコエマセン」と返して来た。

お姉さんは笑顔でさらに
「もう一度近づいて耳が光った時話かけてください」
お姉さんがロボットよりロボットぽかった。
僕はまた話しかけた。
「こんにちは!」

今度は無視された!

僕はこの瞬間全身に電流が流れた。

これは面白い!
お笑いやん!

この初期衝動が今後大きく大きく
色々な事が巻き起こる第一歩になったのだ。