第二回「ドウゾイイデスヨ」 

オペレーターと話したいのに
このようなガイダンスが流れてくる。

「これでいい場合は1をお押しください。
 駄目な場合は2を
 その他は3を
 直接オペレーターとお話したい場合は4を押してください」

それやったら、オペレーターをまず1に持ってこいや〜〜!

企業のカスタマーセンターに電話した時に
ロボット声のお姉さんによく言われるコメントである。

大きな企業になればなるほど
ステマチックになる。
ステマチックになればなる程、心がない感じになる。

僕はロボット博でロボからNOを言われた
あの興奮を家に持ち帰りわくわくしながら早速ホームページを探した。

今の時代、インターネットの出現でいろんな事が便利になった。
検索文字ひとつで調べたい事柄がずらりと出るのだ。

ロボットと検索をし、ずらりと情報が出てきた。
ロボ博で見てきたロボットもいっぱい載ってあった。

中でも気に入ったロボットのホームページを見た。
あ!これだと思い食い入ってみた。

そしてなんとか連絡をとって、もっと詳しく見てみたいと思った。
一緒にロボとお笑いをやってみたいと思った。

普通ならまずは事務所に言ってから企業などに連絡をするのが
芸能人の手順なんだが、僕は「能」が抜けている職業である。

まだお金の確定も出来ていない上
これといった目的がはっきりあるわけではない。

ただ興味があってロボットとお笑いをしたいと思っただけである。

そんな府抜けた理由を、相手にしてもらえるだろうか?

僕も若かったせいか「思い立ったら吉日」
とりあえずは個人的に連絡をして
僕の興味ある事を聞いていただけるならありがたいと思った。

だがどこに連絡をしていいのかわからない。
大学の研究所は教授が個人的にアドレスを
オープンされてる方もいるが
企業になるとお客様センターくらいしか
連絡とりようのないところがある。

ロボ博で見て興味のあった会社にメールを送った。

すると至急に2件お返事をいただいた。

あまりにも早いと思った。

それは自動返信メール。
事務的な事が書かれてあっただけであった。

多分ロボットのセクションまで僕の書いた熱いメールは届いていないと思った。
大企業なんてそんなもんだ。

がっかりしてた矢先に
またとある会社からお返事があった。

件名に○○会社○○と名前が載ってるではないか。

「メールを拝見いたしました。
 もし興味があったら是非会社にお越しください」

自動返信メールではなく大変丁寧な文であった。
大企業なのに心のあられる方からのメールであった。
もちろん書いたのは人間だ。

このメールがこの後の大きな相方のロボットとの
ご縁につながるとは夢にも思わなかった。

第一回「これは面白い! お笑いやん!」

 
「ヨクキコエマセン」
すべての事に関してYESのはずのロボットが
僕が話しかけた時、まさか否定の言葉を
返してきたのにはびっくりした。

僕は2002年に横浜のパシフィコで
開催されたロボット博覧会を見に行った。

僕はそれまで現実のロボットを
生で見た事がなかったせいか
色々なブースの前に並ぶ開発途中のロボットや
展示ショーで動くロボットを見た時
僕の頭の中が久々に、ざわざわした。

各ブースには「夢を実現」などと書かれてあったり
「未来を作る」なんて文字。

心は踊ったがその文字とはほど遠い
理系軍団のメガネ度の高い男性の方々に
スーツを着込んだビジネスマンの
どんよりとしたムードに会場酔いをしそうになった。

「このロボットはどうなるんですか?」

とブースの理系の男性の方に聞くと目をあわさずに
説明をしてくれる丁寧な開発者の方々。
僕の日常使ってる言葉とはまったく異なる専門用語
で話されるので, まるで外国語を話してるようである。

「これって手が飛ぶんですか?」
何ひとつロボット業界の現実を知らない僕。
そのとんちんかんな僕の質問に唖然とする開発者。

展示ショーでは豪華なASIMOの今世紀最大のショーが始まった。
HONDAの名前の入ったコスチュームに身を包んだおねえさんの
「さて!みなさま!こんにちは!」とあの独特の心のないMC口調。
ASIMOの登場です!」と大層な音楽が流れると
来てるお客さんも持ってるデジカメをパシャリパシャリ。

ゆったりとASIMOが歩いてくるが、
袖にはHONDAのウインドブレーカーを着た
おじさまがひやりひやりと見ていてASIMOが止まる度に出てきては、
ケアをする。まるで晩年のミヤコ蝶々さんのような扱いとドタバタ感。

MCののお姉さんも「そのあたりをツッコめよ!笑いになるで!」
と思うのだが、誰もツッコム事もなくぴりぴりムードの微妙な空気。

なんだろう?
この空間は。。。

と、その横に僕の今までのイメージのロボットとは
ほど遠いロボコンにも似たかわいいロボットがいた。
パーソナルロボットと書かれていてどうやら喋るらしい。

その名もパペロ。

N○Cとロゴの入った服を着た笑顔満点のおねえさんが
「どうぞ!話しかけてください」
僕は「こんにちは!」とパペロに言った。

「ヨクキコエマセン」と返して来た。

お姉さんは笑顔でさらに
「もう一度近づいて耳が光った時話かけてください」
お姉さんがロボットよりロボットぽかった。
僕はまた話しかけた。
「こんにちは!」

今度は無視された!

僕はこの瞬間全身に電流が流れた。

これは面白い!
お笑いやん!

この初期衝動が今後大きく大きく
色々な事が巻き起こる第一歩になったのだ。